企業法務に関する用語集

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パワーハラスメント [ぱわーはらすめんと]

パワーハラスメント(パワハラ)とは,職権などの権力を背景にして,本来の業務の範疇を超えて,継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い,労働者の働く関係を悪化させ,あるいは雇用不安を与えることをいいます。うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあります。

平成24年1月30日に発表された,厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」によると,職場のパワーハラスメントとは,「同じ職場で働く者に対して,職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」と定義されています。なお,上司から部下に行われるものだけでなく,先輩・後輩間や同僚間,さらには部下から上司に対してさまざまな優位性を背景に行われるものも含まれます。

職場のパワーハラスメントの行為類型

  1. 身体的な攻撃(暴行・傷害)
  2. 精神的な攻撃(脅迫・暴言など)
  3. 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
  4. 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害)
  5. 過小な要求(業務上の合理性なく,能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
  6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

パワハラに関し,パワハラを行った加害者が法的責任を追及されるのはもちろん,使用者である会社も責任を問われます。会社の責任としては,労働者の権利の侵害と損害の発生による不法行為責任(民法709条),被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う使用者責任(民法715条),数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えた場合に連帯してその損害賠償責任を負う共同不法行為責任(民法719条),安全配慮義務や職場環境配慮義務を怠ったことによる債務不履行責任(民法415条)があります。

変形労働時間制 [へんけいろうどうじかんせい]

変形労働時間制とは,一定の条件のもとで,一定期間内の特定の日または週に法定労働時間を超過することを認める制度です。

変形労働時間制が認められた期間中は,平均して法定労働時間内であることを前提に,業務量に応じた労働時間の配分ができるようになっています。対象となる期間には,(1)1ヵ月単位,(2)1年単位の変形制,(3)1週間単位の非定型的変形制があります。

(1)は,就業規則,労使協定によって導入することができます。(2)については,事業場において過半数の労働者を組織する労働組合がある場合にはその組合,ない場合には過半数の労働者を代表する者(過半数代表者)との労使協定を締結する必要があります。(3)も労使協定の締結が必要とされていますが,対象となる事業場は常時30人未満の小売業,旅館,飲食店等に限定されています。なお,これらの制度の下でも時間外労働が成立する場合があります。

また、変形労働時間制以外にも,フレックスタイム制やみなし労働時間制があります。フレックスタイム制とは、就業規則等により制度を導入することを定めた上で、労使協定により、一定期間(1ヵ月以内)を平均し1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、その期間における総労働時間を定めた場合に、その範囲内で始業・終業時刻・労働者がそれぞれ自主的に決定することができる制度です。

みなし労働時間制は、一定の要件のもとに,実際の労働時間数とはかかわりなく,あらかじめ労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。みなし労働時間制には,「事業場外みなし労働時間制」、「専門業務型裁量労働制」,「企画業務型裁量労働制」があり,それぞれの要件は労働基準法第38条の2から4に定められています。

法定休日 [ほうていきゅうじつ]

使用者は,労働者に対し,少なくとも週に1回は休日を与える必要があります(労働基準法第35条1項。ただし,4週間を通じて4日以上休日があれば週1回でなくても構いません)。この労働基準法の規定を満たすための休日のことを「法定休日」といいます。

法定休日は曜日を特定することは求めていませんので,必ずしも土日祝祭日を休日とする必要はなく,企業の都合で自由に決定しても差し支えありません。また一斉に付与する必要もないので,各労働者の休日を異なる日に指定した場合,シフトを組んで年中無休などの稼動が可能となります。週休2日制を採用している企業では,1日は法定休日ですが,もう1日は法定外休日となります。

この「法定休日」に労働させた場合,使用者は労働基準法の定める割増賃金を支払う必要があり,最低でも35%の割増賃金が支払われなければならないこととなります。また,法定休日の深夜に労働させた場合には,休日労働の35%以上の割増賃金に加えて,深夜労働の25%の割増賃金で計算された賃金を支払わなければなりません。

法定労働時間 [ほうていろうどうじかん]

法定労働時間とは,法律上許される最長労働時間のことをいい,1日につき8時間,1週間につき40時間と定められています(労働基準法第32条)。法律では,原則としてこれを超える時間の労働を禁止しており,就業規則などにより定められた時間(所定労働時間)が法定労働時間を超えている場合には無効となります(同法第13条)。

労働者に法定労働時間を超える労働(時間外労働)を行わせるためには,使用者と労働者との間で,「三六協定」に代表される特別な労使協定を結ぶ必要があります。さらに,このような協定を結んだ場合でも,時間外労働の対価として,所定の割増率に応じた時間外割増賃金を支払わなければなりません。

なお,この法定労働時間による規制がおよばない例として,宿日直勤務を行う者や,管理監督者などが挙げられます。そのような特殊な業務や地位にある者以外の労働者については,原則としてこの法定労働時間内で労働することが求められています。

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