企業法務に関する用語集

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企業法務に関する用語集 さ行

三六協定 [さぶろくきょうてい]

三六協定とは,使用者と,労働者の過半数で組織する労働組合(それがない場合は,労働者の過半数を代表する者(過半数代表者))との間で結ばれる,労働時間の延長や,休日労働の実施に関する協定です。労働基準法第36条に定められていることから,このように呼ばれています。

三六協定には,時間外,休日労働を必要とする理由のほか,業務の種類や労働者の数などを定めなければなりません。さらに,協定を締結しただけでは足りず,これらを記載した書面を行政官庁(所轄の労働基準監督署長)に届け出て,従業員に向け,社内で周知する必要があります。

この三六条協定を結ばずに時間外・休日労働をさせると,場合によっては6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金という刑事罰に処せられることもあります。三六協定を結んでいれば,その範囲内で時間外・休日労働をさせても刑事罰に問われることはなくなります。

その反面,判例では,労働者に時間外・休日労働義務を負わせるためには,三六協定のみでは足りず,就業規則などによる時間外労働義務に関する定めが必要だとされています。また,三六協定を結んでいたとしても,それに対応する時間外労働賃金は支払わなければなりません。

アディーレ法律事務所では,三六協定の作成から届出,社内での適切な周知に至るまで,顧問弁護士がサポートしております。どうぞ,お気軽にご相談ください。

CB [しーびー]

CB(Convertible Bond)とは,一定の条件で株式に転換することができる社債のことです。社債に新株予約権が付された形態で発行されますが,新株予約権の分離譲渡はできません。2002年4月1日以前は転換社債と呼ばれていましたが,2002年4月1日の商法改正によって正式名称が「転換社債型新株予約権付社債」になりました。

CBの特徴

  1. 転換請求期間内に請求すれば,社債を株式にする(転換する)ことができる
  2. 発行時に決められた値段(転換価額)で社債を株式に転換することが可能
  3. 株式に転換せず普通社債として保有することもできる

CBは,社債の利回りの安定性と,株式の売却差益の魅力をあわせ持った金融商品です。転換価額よりも株価が上昇すれば,株式に転換し売却することで利益を得ることができます。逆に転換価額より株価が低いままなら,転換せずに満期日まで待つ(満期償還)ことで社債としての利息を受け取り続けることもできます。このように株式に転換できるメリットが付いているため,CBの利回りは普通社債よりも低く設定されています。

なお,よく似た性質のものでワラント債がありますが,株式を取得してからも社債部分が消滅しない点および株式取得時に購入費用が必要である点でCBと異なります。

J-SOX法 [じぇいそっくすほう]

J-SOX法とは,金融商品取引法に盛り込まれた内部統制報告制度です。米国のサーベンス・オクスリー法(SOX法)にならい,会計監査制度の充実と企業の内部統制強化を求める日本の法規制で,Jは日本版を意味します。

J-SOXに従い,上場企業は,事業年度ごと(年1回)に,財務報告に係る内部統制(会社における財務報告が法令などにしたがって適正に作成されるための体制)を評価し,評価結果を内部統制報告書として開示しなければならず,また,内部統制報告書には公認会計士などの監査証明を受けなければなりません。内部統制報告書として提出する文書は,「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」に例示されている下記の3ツールがあり,3点セットと呼ばれています。なお,必ずしもこの3つの様式の文書が必要なわけではありません。

3点セット
(1) 業務フローチャート 業務の手順を記述する
(2) 業務記述書 業務の詳細な内容を文書で記述する
(3) リスクコントロールマトリックス(RCM) 業務プロセスにおけるリスクとその対応策の一覧表を作成する
社会保険 [しゃかいほけん]

社会保険は,日本の社会保障制度の中心を担う制度です。さまざまなリスク(病気やケガ,失業など)に備え,リスクが発生した場合に一定の給付を行って生活困難に陥らないようにする「防貧」を目的としています。なお,給付を受けるためには,事前に保険料の納付が必要です。日本の社会保険は,法律で加入を義務付けており(強制加入),本人が収入に応じた保険料を支払うほか,国や地方公共団体も費用の一部を拠出します。また,会社員が加入する保険では,雇用主も保険料を拠出する仕組みとなっています。なお,社会保険は「公的保険」であることから,労働者を雇用する事業所はその規模に関わらず保険事務が発生します。

具体的には,(1)健康保険,(2)厚生年金保険,(3)介護保険,(4)労働者災害補償保険(労災),(5)雇用保険のことをさします。また,(4),(5)を労働保険と総称し,(1),(2),(3)をまとめて社会保険と呼ぶ場合もあります。これらの保険は,それぞれの法律(健康保険法,厚生年金保険法,国民年金法,労働者災害補償保険法,雇用保険法,介護保険法)によって,加入条件,保険料,給付内容などが定められています。

就業規則 [しゅうぎょうきそく]

就業規則とは,使用者が,労働者の労働条件の画一化・明確化のため,労働者が守るべき服務規律・職場規律を含む労働条件の詳細について定めた規則のことです。

常時10人以上の労働者を使用する事業者は,必ず就業規則を作成し,行政官庁(所轄の労働基準監督署長)に届け出る必要があります。また,就業規則に必ず記載しなければならないものとして,労働時間や賃金,退職に関する規定などがあげられます。

なお,就業規則は,労働条件・服務規律の統一的かつ公平な決定のために重要な機能を有するいっぽうで,使用者が一方的に作成するものであることから,無条件で定めることはできません。

就業規則は,法令または当該事業場で適用される労働協約に反してはならず,労働基準監督署は,これに違反する就業規則の変更を命じることができます。また,就業規則が法令または労働協約に違反した場合,その部分については労働契約の内容にならず,無効となります。特に,懲戒解雇処分に関しては,就業規則にその事由が記載されている必要があり,記載のない事由で懲戒解雇処分を行うことは不当解雇にあたるため,無効となります。

就業規則の作成,届出,周知に際しては,企業法務や会社労務に強い弁護士に相談することをおすすめします。書籍やインターネットなどにより一般的な雛形を入手することは容易になりましたが,会社の経営環境や就労環境の実情は,その事業規模など段階に応じて千差万別です。しかも,就業規則をいったん定めると,従業員に不利益となる変更を加えることが,基本的には難しくなる側面があり,経営の大きな足かせになってしまう可能性があるのです。

試用期間 [しようきかん]

試用期間とは,会社が従業員を採用するにあたって,入社後の一定期間をいわば見習い期間とし,この間に能力・人格等の正社員としての適格性を評価し,本採用するかどうかを判断するという制度です。

この期間は,一般的には1ヵ月から6ヵ月ですが,期間についての法律上の定めはありません。もっとも,試用期間があまりにも長期にわたる場合は無効となる可能性があります。

会社は,試用期間中に正社員としての適格性を考慮し,適格性がないと判断した場合には,本採用の拒否(解雇)をすることができます。いっぽうで,本採用を拒否されることなく試用期間が満了した場合は,正社員として雇用されたということになります。つまり,試用期間とは,法的には「会社と従業員との間で労働契約は成立しているものの,解雇権を留保している状態」といえます。

また,試用期間の延長については,試用期間中の従業員の立場を不安定にすることになるため,就業規則等で延長に関する具体的な事由を明記しない限り,法的な効力は認められないとされています。なお,会社は,従業員が試用期間中であっても,社会保険および労働保険の加入手続をする義務があります。

アディーレ法律事務所にも,試用期間内での本採用の拒否を巡る労務問題について,一定数のご相談が寄せられています。解雇権が留保された雇用契約ですから,通常の解雇手続に比べれば,本採用の拒否は認められやすいものの,単に勤務態度が悪いとか,業務上のミスが多いとか,技能が求められる水準に達していないなどの理由では,認められ難いからです。そのため,顧問弁護士に事前に相談しながら,適切に手続を進めることが,後々の不要な労務トラブルを防止することに繋がります。

新株予約権 [しんかぶよやくけん]

新株予約権とは,株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利をいいます(会社法2条1項21号)。2002年4月の商法改正により新設され,従来の転換社債の新株への転換請求権部分,新株引受権(ワラント),ストックオプションが新株予約権という名称に統一されることになりました。
新株予約権は分離譲渡できないため,新株予約権を行使する場合は,一定の行使価格(社債部分の金額)を払い込むことで,会社に新株を発行させたり会社が保有する株式を取得したりすることができます。新株予約権の行使によって発行される株式数や,新株予約権を行使できる期間などはあらかじめ決められています。

新株予約権の付与された社債を新株予約権付社債(ワラント債),新株予約権付社債のなかで従来の転換社債と同様の商品性を持つものを転換社債型新株予約権付社債(CB)といいます。

新株予約権の詳細については,会社法の第236条から第294条(会社法・第3章 新株予約権)で規定されています。

新株予約権の主な特徴としては,株式発行と違い,発行しても行使されるまでは資本金の額が増加しない,金融機関からの融資と違い負債が増えない,などが挙げられます。

また,新株予約権の主な目的は下記のとおりです。

  1. 役員または従業員にインセンティブ報酬として付与する(ストックオプション)
  2. 社債に付与することにより資金調達を行う
  3. オーナー株主の潜在的持ち株比率の維持
  4. 敵対的買収防衛策としての利用

会社の事情に合わせ,適切に新株予約権の取得事由や行使条件の内容を設計するためには,会社法などの実体法的な側面と登記法の手続法的な側面の両面に注意が必要です。弁護士なら,その両面から新株予約権の内容に付き,適切なアドバイスを行うことが可能です。適正な経営を継続し,企業を発展させていくために,弁護士に相談しリスクヘッジを行うことをおすすめいたします。

ステークホルダー [すてーくほるだー]

ステークホルダーとは,企業に対して利害関係を持つ人や企業活動と関係するあらゆる人,すなわち利害関係者のことです。

企業と直接の利害関係を持つ顧客,株主,債権者などだけでなく,地域住民,官公庁,研究機関,金融機関,そして企業の従業員などもステークホルダーに含まれます。

近年,企業に対する法令遵守(コンプライアンス)を含む内部統制システムの構築,財務の健全性を示すアカウンタビリティなどの強化が義務付けられつつあります。さらに,ステークホルダーからの信頼を得るための,企業の社会的責任(いわゆるCSR)も求められています。

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