人事・労務問題

labor

人事労務管理

労働時間

労働時間には「法定労働時間」と「所定労働時間」という概念があります。「法定労働時間」は労働基準法で定められており,会社は,労働者を1日8時間,1週間で40時間(ともに休憩時間を除きます)を超える労働をさせてはならないとされています(労働基準法32条の1ないし2)。もっとも,例外的に【1】商業・理容業,映画・演劇業(映画の製作事業を除く),保健・衛生業,接客・娯楽業の事業であり,かつ,【2】常時10人未満の労働者を使用する場合には,1日8時間,週44時間までの労働が認められています(労働基準法施行規則25条の2の一)。

いっぽうで,「所定労働時間」とは,会社によって,就業規則や雇用契約などに基づいて定められた契約ですので,法定労働時間を超える契約をしない限りは,会社が自由に定めることができます。つまり,所定労働時間を1日7時間,1週間で35時間とすることについては,法定労働時間の上限を超えていませんので会社の裁量の範囲内となりますが,所定労働時間を1日9時間,1週間で45時間とすることは,法定労働時間で定められた上限を超えているため,当該契約は法定労働時間の上限である1日8時間に修正されます。

着替えなどの就業の準備時間は労働時間となるのか

たとえば,出社して業務用のPCを立ち上げている時間や会社の制服に就業の準備時間,あるいは,運輸業における運転手のように,荷積み・荷下ろしに係る待機時間などは労働時間に含まれるのでしょうか。

この点,これらの時間は「手待ち時間」と呼ばれ,労働時間に算入されます。行政の解釈としての労働時間の定義は「労働者が使用者の指揮監督の下にある時間」とされています。

休憩時間

「休憩時間」とは,「労働者が労働から離れることを保障される時間」を指します。よって,休憩時間としている時間帯に従業員に対して電話番をさせたり,事務所から出ないことというような指示をしたりすると,これらは,実際にその時間に受電などの業務が発生したか否かを問わず「手待ち時間」として法律上は,休憩時間ではなく,労働時間に算入されることとなります。

休憩時間に係る法律上の定め

休憩時間について,使用者に課せられている労働者に最低限取らせなければならない休憩時間に関する義務は以下の表のとおりです(労働基準法34条1項)。

また,これらの休憩時間は細切れに取らせることもできます。たとえば,12時から40分,15時から20分というようにすることも可能です。また,休憩時間は,事業場レベルで一斉に取らせることが原則ですが,一定の要件の下で,労働者単位で休憩時間を取らせることもできます(労働基準法34条2項)。

労働時間 休憩
6時間以内の労働 0分
6時間を超える労働 45分
8時間を超える労働 60分

有給休暇

年次有給休暇の日数

従業員との間でトラブルとなりやすい制度のひとつに年次有給休暇があります。有給休暇に関連する決まりをしっかりと把握し,無用な労使間トラブルを起こさないように予め就業規則等の社内規定をしっかりと整備すること,会社においてもその運用をしっかりと労務管理部署に落とし込むことが非常に重要になります。

年次有給休暇は,雇入れの日から6ヵ月間,継続勤務して,かつ,その間の全労働日の8割以上出勤した労働者(正社員やアルバイトなど雇用形態は問いません)に対して最低10日を付与しなければなりません。その後,継続勤務年数に応じて1年ごとに以下のとおり,有給休暇が付与されます。

一般的な労働者(週所定労働日数が5日以上,または週所定労働時間が30時間以上)
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
1週間あたりの所定労働時間が30時間未満の労働者

1週間当たりの所定労働時間が30時間未満のパートタイム労働者の場合には,以下のとおり,有給休暇が付与されます。

1週間あたりの所定労働日数が4日,または1年間の所定労働日数が169日から216日の労働者
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
1週間あたりの所定労働日数が3日,または1年間の所定労働日数が121日から168日の労働者
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
1週間あたりの所定労働日数が2日,または1年間の所定労働日数が73日から120日の労働者
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1週間あたりの所定労働日数が2日,または1年間の所定労働日数が48日から72日の労働者
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年以上
付与日数 1日 2日 2日 2日 3日
労働基準法72条の特例の適用を受ける未成年者で,かつ上記一般的な労働者に該当する者
継続勤務年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年
付与日数 12日 13日 14日 16日 18日 20日

年次有給休暇の時効

有給休暇の請求権は,発生日から2年間で時効となります。また,従業員の退職,解雇など労働契約が終了したことにより2年間の時効を待たずに消滅します。

従業員の退職により消滅する有給休暇について,退職者との合意によって会社がこれを買い上げることは可能です。もっとも,退職者に買い上げの請求をされたとしても買い上げる義務は会社にはありません。なお,在職中の従業員の時効になっていない有給休暇を会社が買い上げることは労働基準法では認められていません。

退職直前にまとめて有給休暇の消化をされることは認めなければならない?

よく「退職を1ヵ月後に控えた従業員がたまった有給休暇をすべて消化して辞めると言っているのですが,業務の引継や業務量を鑑みて,これを拒否することはできませんか?」というご相談をお受けします。結論から言うと,この有給休暇について拒否することはできません。

会社は,従業員の有給休暇について有給休暇を取る日を変更させることができる「時季変更権」を要件に従って行使することができますが,この時季変更権は,変更できる時季が存在しなければ,当然に行使することはできないのです。つまり,退職を1ヵ月後に控えた従業員から申請された有給休暇は,別の日に変更することができない(時季をずらしてしまうと退職日を超え,有給休暇自体が消滅してしまう)ため時季変更権を行使することができないのです。

育児・介護休業

育児・介護休業は,「育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)に規定されており,会社は,1歳未満の子を養育(同居し,監護)する労働者から育児休業の申し出があった場合は,育児休業を与えなければなりません。また,会社は家族が要介護状態にある労働者から介護休業の申し出があった場合には,介護休業を与えなければなりません。

もっとも,有期雇用労働者は適用外となるケースや,勤続期間が1年に満たない者等は労使協定を締結することで適用除外とすることもできます(育児・介護休業法6条,11条)。

なお,これら育児休業・介護休業については就業規則に必ず条項を入れなければいけませんので,これから就業規則を作成する場合や現在の就業規則に育児・介護休業に関する規定がない場合には記載する必要があります。

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