人事・労務問題

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非正規雇用

労働者による働き方の多様化,会社における労務コスト削減の要請により,いわゆる正社員以外の非正規社員が多くの業界で雇用され,活躍しています。

正社員,期間契約社員,パートタイマーなど名称を問わず,雇用形態の異なる社員が混在する場合には,それぞれの雇用形態の社員との間での労使トラブルの防止が非常に重要になります。

非正規雇用とは

非正規雇用とは,いわゆる「正規雇用(期間の定めのない雇用契約を締結しているいわゆる“正社員”)」以外の有期雇用をいい,「契約社員」,「臨時社員」,「派遣社員」,「パート」,「アルバイト」などその雇用の形態に応じて会社によってさまざまな名前が付けられています。

労働契約法の改正

長引く不況のため,会社はいわゆる正社員の採用を控えるとともに,非正規雇用である契約社員などの有期労働契約の社員を増やしています。これらの有期労働契約においては,いわゆる雇止め(契約期間満了による労働契約の解除)や正社員に比べて賃金が低いなど,正社員と比較して均衡な取り扱いがなされていないことが社会問題となっています。こうした問題に対し,平成24年に,以下のとおり,労働契約法が改正されました。主な改正のポイントは以下のとおりです。

無期労働契約への転換

有期労働契約が反復・更新されてその期間が通算で5年を超えたときは,労働者の申込により,期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されます。これは,6ヵ月以上の空白期間(クーリング期間)を設けることによって,通算5年のカウントをリセットすることができます。

「雇止め法理」の法定化

最高裁の判例で確立した「雇止め法理」がそのままの内容で法律の中の条文として入りました。内容としては,有期労働契約が,無期契約と同視できる場合,または有期契約であるものの雇用継続の合理的期待がある場合には,無期契約(正社員)の場合と同様に,解雇権濫用法理(労働契約法第16条)が適用され,雇止めについても正規雇用社員の解雇する場合と同様の要件を備えなければならないこととされました。

正規雇用社員と非正規雇用社員の均衡待遇

有期契約労働者と無期契約労働者との間で,不合理な労働条件の相違を設けることが禁止されました。

会社が有期雇用社員を雇い入れる際のポイント・留意事項

当初の契約期間をどのように設定するか

有期労働契約の期間については,原則3年とされています。もちろん,3年後に更新することはできます。また,公認会計士や医師,弁護士,薬剤師など「専門的な知識,技術または経験であって高度なものを有する労働者」を有期雇用で業務に従事させる場合,及び満60歳以上の高齢者にかかる場合については,5年とされています(労働基準法14条)。

いっぽうで,有期労働契約期間の下限については定められていませんが,会社は必要事情に短い期間で労働契約を締結し,その契約を反復更新することがないよう契約にあたって配慮しなければなりません(労働契約法17条2項)。

もっとも,そうはいえ,3年の有期雇用契約を締結した場合,原則として中途解約をすることはできません(民法628条)。よく,雇止め(有期雇用期間満了による労働契約の解除)と解雇(使用者による一方的な労働契約の解除)を混同している経営者の方もいらっしゃいますが,解雇をするためには「客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当である」ことが必要ですが,有期雇用の途中解約をするためには,これよりも厳しい要件が必要であるとされています。

そこで,一度有期雇用契約を締結してしまったら,使用者も労働者もその契約期間中は「やむを得ない事由」がない限り,当該契約に拘束されてしまうこととなります。経営者としては,契約期間を短期に設定してしまうと,結局何度も更新を行うこととなり,労働者に「更新の期待」を生じさせ,雇い止めが難しくなるおそれがでてきます。これに対し,契約期間を不必要に長期に設定してしまうと,契約期間中は中途解約が困難であるため,期間満了まで雇い止めを待たなければならないこと,労働者が自己都合により退職したいと考えた場合でも,「やむを得ない事由」がない限り辞めることができず,会社側と紛争となることもあります。 よって,有期雇用契約を締結する際には,これらのバランスを考量して締結する必要があります。

反復・更新により勤務継続期間が通算5年を超えないように留意すること

労働契約法の改正により,有期労働契約が通算5年を超えた場合には,無期労働契約に転換されるという制度が導入されました。この無期契約への転換は,「労働者の申込」が要件となっており,「通算契約期間が5年を超える場合に,その契約期間の初日から末日までの間に」,無期転換の申込が可能となります。

たとえば,3年契約を締結した場合,1回目の更新をした日から無期転換の申込が可能となり,この申込が行われると,使用者がその申込みを承諾したものとみなされるため,(当該有期契約が満了した日以後の)無期労働契約が成立してしまうことになります。よって,当該有期契約を更新し通算5年を超えるような場合(たとえば,1年契約の場合には1年契約を5回繰り返し,5回目の更新を行う場合)には,無期契約に転換するリスクがあるので,安易に更新しないよう留意する必要があります。

更新の期待を抱かせるような言動は控えること

労働契約法の今回の改正により,これまで判例法理として認められていた「雇い止め法理」が実定法化されました。実務上は,従前の判例法理が条文に取り込まれただけなので,この改正に従って,対応を変える必要はありません。

経営者としては,雇用の調整手段のひとつとして,有期契約の雇い止めを確保しておくことは非常に有効であると言えます。そこで,会社としては,この雇い止めが将来的に制限されることのないよう,(実際はケースバイケースとなりますが)以下のような対応が必要となります。

具体的には,有期契約の更新の際には,自動更新とはせずに,きちんと契約書を取り交わすこと,次回以降も更新があり得ることを示唆しないこと,有期契約社員には可能な限り基幹的業務ではなく臨時的な業務に就かせること,不必要に契約を更新しないこと,などが重要となります。

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