人事・労務問題

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労働審判・訴訟への対応

労働審判への対応

労働審判とは

近年,著しく増加している労使間トラブルに対応するため,平成18年から労働審判制度がスタートしました。労働審判とは,民事上の個別労働紛争について,審判官(裁判官)と,労働問題の専門的な知識と経験を有する労働審判員が関与しながら,紛争を解決する制度です。ここでいう「個別労働紛争」とは,会社と労働組合といった団体同士の労働問題ではなく,会社とひとりの従業員との間の労働問題トラブルのことをいいます。

また,労働審判員とは,このような個別労働紛争を扱ったことがある経験と労働問題に関する知識を持っている方たちの中から,裁判所によって2名がそれぞれの労働審判に選任されます。選任されるのは,連合(日本労働組合総連合会)や経団連(日本経済団体連合会)などから推薦を受けており,そのうち1名は会社側として,もう1名は労働者側として選ばれます。ただし,両名共に手続への実際の関与はあくまでも中立,公平な立場で関わることとなります。

「紛争を解決する」という点について,労働審判で実際にどのようなプロセスで紛争の解決を図るかというと,3回以内の期日で労働審判が開かれ,話し合いの中で調停(和解)が試みられます。もし,調停がまとまらなければ,事案の実情に応じて解決案(審判)が出され,審判に異議がなければ,訴訟で得られる判決と同じ法的効果が生じるというものです。

労働審判申立件数

労働審判申立件数

右記のグラフは,労働審判の申立件数の推移を表したものです。ご覧のとおり,申立件数は増加傾向にあります。

終身雇用制度が崩壊し,かつ不況が長引く中で,昔のような忠誠心にも似た会社への帰属意識は希薄となり,退職と転職による労働者の権利意識は高まりつつあります。元従業員が前に勤めていた会社に対して,退職後に未払いの残業代を請求したり,退職金を請求したりすることは,珍しくなくなりました。

経営者は,このような状況を十分に理解しながら会社を経営していかなければならない時代になっています。

従来の手続との相違点

従来のそのほかの紛争解決方法と労働審判はどのような違いがあるのでしょうか。従来からあるそのほかの紛争解決方法としては,

  • 労働基準監督署からの指導や是正勧告
  • 都道府県労働局等によるあっせん
  • 裁判所を利用した訴訟手続

などがあります。労使間トラブルと聞くと,経営者の方は真っ先に労働基準監督署や労働局を思い浮かべる方も多いかと思います。たしかに,これらの機関では,労働トラブルに関する相談業務,あっせん手続に関する業務を行っています。

しかし,あっせんには,それに応じなければならない法的な拘束力はないため,会社側は参加自体を拒否したり,あっせん内容を拒否したりすることが容易にできます。また,訴訟手続は,会社としても非常に時間がかかり,第一審の判断が出るまで1年程度かかることもあることからコストが非常にかかります。仮に勝訴したとしても,従業員側が控訴・上告した場合には,さらに時間がかかることになります。

訴訟手続の中で和解がまとまらない場合,裁判所は判決を出すこととなりますが,その際には必ずしも会社や従業員といった当事者の本意には沿わない形での判決しか出ないこともあります。そのため,実際の問題の解決には実効性に欠けてしまうとの批判もありました。

労働審判における弁護士選任率

平成18年に制度がスタートしてから平成23年までの統計調査によると,労働審判の申立における代理人弁護士の選任率は83.6%となっています,実に,8割以上の案件で,弁護士が代理人として付いているのです(最高裁判所行政局調べ)。

労働審判は,スピーディーかつ柔軟に解決することが特徴の制度ですが,当事者同士で行うということになると,やはり,感情的な水掛け論が出てきたり,上手に争点をまとめることができなかったりと,せっかくの特徴が損なわれてしまうおそれがあります。手続が短くて済むということは,会社としては,綿密な準備をして審判に臨まなければならないのです。

その点,弁護士が代理人として間に入れば,このような問題は解決されます。相手方に弁護士がついている以上は,その主張に対して短い期日で有効な反論をしていくためにも,もし,会社に労働審判の申立書が届いたら,すぐに弁護士に相談することをおすすめいたします。

訴訟への対応

労働審判だけでなく,労働訴訟の件数も増加傾向にあります。労働訴訟においては,解雇などをされた従業員が,当該解雇を不当として従業員であることの地位を確認するために提起する「雇用契約上の地位確認請求」や未払いの時間外割増賃金などを求めて提起する「未払賃金請求」が典型的です。これらいわゆる労働訴訟は,ほかの類型の訴訟に比べても長期化するといわれています。もちろん,訴訟の途中で裁判所の仲介によって和解することも多くあり,事案によっては,長期化せず決着することもあります。

会社が元従業員に対して在職中の損害について賠償請求するという事案は一定程度あるものの,基本的には訴訟を提起される側となります。訴訟を提起される場合,もちろん突然訴状が会社に届くこともありますが,多くは弁護士から受任通知や内容証明などが会社に送付され,まず任意交渉から始まる場合が多くあります。労働問題は,多岐に渉る法的知識や訴訟においても複雑な手続を求められます。これらに会社が自身で対応していくことは非常に精神的・金銭的な負担を要します。この負担軽減や法的リスクのヘッジのためにも訴訟を起こされる前段階でのご相談をおすすめします。

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